重なる言葉、重ならない想い ※動乱視点
どれだけ言葉にしても、貴方には届かない。
こんなにも貴方の事が好きで、こんなにも貴方のことを想っているのに。
どうしたら、この狂おしいまでの想いを分かってもらえる?
ねぇ、オレは ――――――――――――――――――
『某も若のことが好きですよ』
返された優しい愛情の言葉に、子供は泣き出しそうになるのを必死で堪えた。
嬉しいと思う心は嘘じゃないのに、それ以上に悲しくて悔しくて仕方なかった。
虎兒がくれる親愛の情は、どこまでも甘く子供を包み込む。
何時だって惜しみなく愛情を注ぎ。何時だって惜しみなく全てを捧げてくれる。
それは虎兒をより身近に感じさせ、そしてそれ以上に酷く遠くに感じさせるのに。
虎兒が自分の側に居てくれるのは、それが仕事だからに過ぎないのだろう。
父上から言い渡されたから、それが父上に対する忠義の表しだから。
もちろん、だからといって虎兒の愛情を疑うわけではないけれど、
役目でもなんでもなく、徳川という名がなくとも、
ただオレを想って、オレだけに向けられたものが欲しかった。
ねぇ、オレは ――――――――――――――――――
オレだけを、好きだと言って欲しいんだよ。
<09/8/19(再録)>
[ 2009/08/19 21:13 ]
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重なる言葉、重ならない想い ※虎兒視点
「虎兄ぃ、大好き!」
満面の笑顔で告げられた愛情の言葉。
そこに他意がないことは分かっているのに一瞬言葉に詰まった己を虎兒は恥じた。
漏れそうになる苦笑を押さえ込むのは慣れすぎて、己の醜さを嘲うしかないけれど。
「某も若が大好きですよ」
告げた想いに擽ったそうに、けれど重なった言葉に嬉しそうに顔を綻ばせる緋色の子供に、
虎兒も同じだけ柔らかな笑顔を浮かべた。
小さな両手をいっぱいに広げてぎゅうぎゅうと抱きついてくる無邪気な親愛は少しだけ後ろめたくもあるけれど、
それ以上の愛おしさに抱き返しながら。
『 貴方だけが、大好きですよ 』
一生伝える事のない言葉を親愛の抱擁に潜ませて、愛しい子供に愛を送った。
<09/8/20(再録)>
[ 2009/08/19 21:06 ]
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「「どっち?!」」
だらだらと流れ出る汗は冷や汗以外の何物でもなく。
斬はじりじりと無意識に後ずさりながら、目の前の鬼気迫る二人に泣きたくなった。
「どっちだっ、斬」
「くだらねぇ…俺に決まってるだろ」
その前に何故、二択?!
「ああああのっ!僕っ」
「心配すんな斬。俺が守ってやっから!だから遠慮なく言ってやれ」
どんと胸を張って笑顔を浮かべる貫木。
というか、今、言おうとしたんだけど…
タイミングを外され、斬のストレス度10UP
「はっ、なにかっこつけてんだ、野獣。村山、騙されんなよ」
「ああ?!そりゃテメェだろうがハダカ野朗。
んな格好で斬の周りをうろちょろしやがって。セクハラも大概にしろよ」
「あ?!んだとコラ」
「わぁっ!喧嘩はやめっ!!」
慌てて叫んだのも虚しく、睨み合った二人の間にキラリ不穏な光り。
続いてドーンと響いた衝撃音に、斬の心労20UP。
あぁ、校舎が壊れてく…
というか…
「僕、月島さんが好きなんだけど…」
ぽつり呟いた言葉は、死闘繰り広げる二人に届く事もなく。
またそこに飛び込む勇気も無い斬は、一人ぐすんと鼻を啜った。
<09/08/07(再録)>
[ 2009/08/07 20:49 ]
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お前のすべては俺のもの
ひくりと頬が引き攣った。
それを見て眉を顰めるでもなくにやりと口角を歪めるから、斬はじりっと後ずさる。
下がれば下がるだけ、逃げ場が無くなるのは分かっているのだけれど。
「何で、逃げるんだよ。まだ話は終わってないぞ?」
にやにやと非常に性質の悪い笑みを浮かべながら近寄られ、斬は同じだけ後ずさった。
そろそろ後ろの猶予が無くなってきていることに気付いてはいるが、
だからといってこの人を待ち構える勇気は斬にはない。
「じゃあ、何で、近づいてくるんですか」
「んなの、お前が逃げるからだろ?」
「それは、絶山さんが近づいてくるから、です」
じりじりと後ずさりながらも気丈に睨み付ける姿は、
まるで怯えているのがバレバレなのにふーっと毛を逆立てる猫の子のようでとても微笑ましい。
ふっと柔らかに細めた眸に、簡単に警戒を解くのは猫にしては無防備だけれど。
「ぁっ!!」
「捕まえた」
一気に縮めた距離のその勢いのままだんっと顔のよこに手を付き、囲い込んで逃げ道を塞ぐ。
びくりと跳ね上がった肩。眸は怯える様に揺れていた。
「なぁ、村山。返事は?」
わざとらしいくらい甘ったるく囁いて耳朶に噛り付く。
立てた歯は所有の宣言、舐め取った血は束縛の始まり。
「まぁ、お前に拒否権はないけど、な」
泣きそうな顔すら愛おしいから、さぁもっと、この腕の中で顔を歪めて。
<09/08/07(再録)>
[ 2009/08/07 20:44 ]
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「好きだ」
びっくりと眼を丸くして驚く。
ぱちぱちと目を瞬かせながら見上げた討条は、無表情のまま斬を見下ろしている。
そのままじぃと無言のまま見つめあい、やがてこてりと首を傾げて沈黙を破った。
「あ、りがとう、ござい、ます?」
「ああ」
とりあえずお礼。返される返事。
「………」
「………」
そして無言。
「……………」
「……………」
無言。
「……………………………」
「…………………………;」
ひたすら無言。
「…村山」
「っ!は、はいぃっ!?」
唐突に声を掛けられ、勢いあまって声がひっくり返った。
思わずかぁっと赤くなった頬にふっと討条が笑い。
始めて見るその柔らかな笑みに、斬は先ほどとは違う意味で顔を赤くした。
「帰るぞ…送ろう」
それだけ言って先に歩き出した討条に、斬は慌ててその背を追った。
すぐに追いついた横顔にはもう笑顔は無くて、それを少しだけ残念に思う。
もっと笑って欲しかったなぁ。なんて言えないけど。
また笑ってくれると嬉しいなぁと、斬ははにかむように笑った。
「討条さん…」
「?」
「ありがとう、ございます」
「ああ」
にこにこと笑う斬と、その笑顔に釣られて口元を緩めた討条。
ほのぼのとした空気を漂わせ、夕闇に影は寄り添う様に長く伸びた。
<09/08/07(再録)>
[ 2009/08/07 20:35 ]
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